Misaki Nishinaka

I sing my mind with flute.
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CONTEから始まる物語 つづき


CONTEから外へ出ると小雨だった。
風がすごく強かったような気がする。
鳥掘のバス停の方まで猛ダッシュした。


… 白いマグカップは私の手元にない。

息子さんが届けてくれた白いマグカップは
私の手元にないのだ。
行方がわからないこの現実を…
帳消しにしたい思いだった。
走ったら消えるかもしれない。
風に吹き飛ばしてもらいたい。
しかし、同じくらいの勢いで

沢山の思い出がよみがえってきた。


山口さんは与那国島で一番最初に親切にしてくれたおじさんだった。
竹笛の演奏が独特で、まるで前衛的な絵のような強烈さだった。
島で開催されたあるアーティストのライヴに私も呼んでくれた。
飛び入りで一曲演奏させてもらった。
打ち上げがセッション大会だった。レベルの高い打ち上げだった。
そのあるアーティストと東京の三軒茶屋でバッタリ会った事がある。
感激の出来事だった。お互い名前も覚えていなかったけど。
そういえば、雨の日に山口さんの窯元まで行ったっけ…
あれから与那国島にも行けてない…


「私は ひじゅるーか」と… 思った。

マグカップもないし。きっと捨てたに違いない。
自分はこんなに冷たい人間なのか。自分で自分にがっかりした。


土曜日の朝。実家の食器棚を開ける。
もしかしたら、白いマグカップがある。
ありますように。と、願った。

しかし、次の瞬間、
「はい。美咲はひじゅるー決定」と、心の中で呟いた。



特別な体験も、気持ちも、時が経つと共に忘れてしまったり、
またはそれ以上の何かを積み重ねている。
一生忘れないというその気持ちは一生に一度しかない。
人は日々、また特別な何かを積み重ねる。
そして、また一生に一度の気持ちと出会う。

なんだか、いろいろと失ってしまったような気がしてしまった。
あの時の気持ちをどうしてこんなに簡単に手放したのか
…わからない。



月曜日の昼。
妹とヤチムンを探しに出掛ける。私はヤチムンが好きだ。
一つひとつに個性があって、使っていくうちに風味が出る。
愛情のかけ方次第で放つオーラが変わるような気がする。
自分の元に来た時から、そのヤチムンは「家族」となる。

国際通りにあるヤチムン屋。
私は真剣に一つひとつを手に取り、選んだ。
ふとあるコーナーへ目をやると、白い器が並んでいた。


「 山口陶工房 」


「山口さん!」と、今度は声に出して叫んだ。

山口さんの工房の器が並ぶ棚があった。

CONTEで山口さんのマグカップと出会ってから
私は自分の様々な思いと散々葛藤してきて、
ひじゅるーな自分を認めたのに、またここで山口さんか!
あ〜。はい。本当に反省しています。
許して下さい、神様。と、ジタバタ。

もう、これは一緒にいる妹に懺悔しようと決め、
私のひじゅるー物語を妹に話し始めた。

そうすると、私の懺悔の途中で、

いもうと : 「あ〜、美咲ね〜ね〜に同じのもらったね〜」
わたし : 「???」

いもうと : 「旦那と珈琲を飲む時はいつもこれだよ〜」


… 私は救われた。
そうだ。妹夫婦に使って欲しくてあげたんだ。

当時、ペアのマグカップは私には眩しかった。

なんだか、使わずに持っているのも可哀想だったし、
大事な物だからこそ、妹夫婦に使って欲しかったんだ。
それまでは、
いつか、使う日が来るまでと、
ガラスのケースに飾って大事にしてた。

そうだ、そうだ、ガラスのケース!
この辺りから記憶が途絶えてたのだ。


あ〜、もう、全部思い出した。
よかった、私、ひじゅるーじゃないよね?




妹にやっぱり返してと言いたいくらいだった。
いや、言った(笑)。冗談で。
でも、妹をいじめるお姉ちゃんは卒業したつもりなので、
このマグカップの表情を見ただけで満足だ。

妹夫婦の元で可愛がってもらっている事を知り、
ようやく、山口陶工房の作品の目の前に立てた。
変わらないマグカップのデザイン。
どれもシンプルであたたかい作品。
しのぎ箸置きなんて、和なのにモダンな雰囲気さえする。

「我が家に来てもらおう、この子たちを迎えよう」と思った。


その前にやっておきたい事がある。

山口さんに手紙を書くのだ。

山口さんはもう私のことなんて忘れているかもしれない。
でも、そんな事関係ない。


もう一つ思い出した。

私は「シビランカ」というタイトルの曲を作っていた。

実家の新築の為に作ったのだ。
鉄筋コンクリートの家では「紫微鑾駕」(シビランカ)の
護符を貼る場所がないから、私は代わりに曲を作った。





とにかく、与那国島の山口さんに手紙を書く。






CONTEから始まる物語
終わり。








Coyote特別編集号『冬こそ沖縄』刊行記念
  西仲美咲ライブ
2016.3.25@RainyDay Bookstore&Cafe

2016年 3月25日(金)

出演 / 西仲美咲(Fl)竹内大輔(Pf)
Open / 18:30
Start / 19:00
参加費 / 2500円(ドリンク代別)
会場 /
RainyDay Bookstore & Cafe
住所 / 東京都港区西麻布2-21-28 スイッチ・パブリッシングB1F
ご予約はこちらから →
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「あかばなーのうた」

RELEASE:2012.9.3
2100円(tax in.)MNR-002


NEW Album

「LEQUIO HISTORIA」

NEW RELEASE:2015.10.10
2000円(tax in.)SWCD-001
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